「誰もいない森で木が倒れたらどんな音がするか」という質問は
よくコーチングやコミュニケーションの話でも使われる哲学的問答のひとつです。
答えは、「誰も聞いていなければその音は存在しない」です。
音は、空気の振動によるものですが、それを私たちの耳の中の
鼓膜が音だととらえて初めて音として認識されるので、
音として聞く人が誰もいなければ「音」は存在しないということになります。
人とのコミュニケーションも同じことだと思います。
コミュニケーションには伝え手と聞き手(受取り手)がいます。
伝え手がいくら発信しても、それをだれも聞こうとしなければ
そのメッセージは結局発信されなかったことと同じです。
実は、私の母が認知症にかかり、だんだんとコミュニケーションが
難しくなってきています。
想いがあっても必ずしも相手に伝わるということでは
ないんだなと思うこともあります。
認知症というのは、感情の記憶は残るらしいので、
いっときの「嫌だ」という感情は、それがどのような理由でそう思ったかは
忘れてしまっても残るのだそうです。
私はまっすぐに正論をいうほうなので、つい厳しいことを母に
いってしまうことがあり、それを母は気に入らなかったらしく、
現在私は母にとって、「嫌いな人」になっています。大変つらいことです。
それでも、母のために、私には正論を言い続けることしかできません。
いつか、私の発する音が、母への想いのメッセージとして理解してもらえる
日がくることを信じています。
つくづくコミュニケーションというのは難しいと思います。
しかし、人がつながり、本当の信頼関係を持てるのも
コミュニケーションを通してのこと。
本当のコミュニケーションの実現のためには、
唯一「あきらめないこと」が大切なのだと思って頑張ることにしています。