大変悲惨な事件がおこりました。焼肉店で提供されたユッケで、4人が死亡。昨日の日経新聞朝刊によると100人ぐらいが食中毒を起こしたということです。
実は私は実家が焼肉店を営んでいたこともあり、今回のことについてはいろいろと考えることがあります。まだ警察の調査が終わっていないため、あくまでも一般的な話として書いておりますことをご了承ください。
生肉の表面にはやはり細菌がつきます。これは自然におこることです。ですので、厨房では肉の表面をそぐ(トリミング)ことは手順のひとつとして存在しています。しかし、昨今、多くの大手焼肉チェーンでは、効率化のために肉の卸から表面をそいで真空パックされている肉が厨房にとどけられていることがあるかと思います。つまり特殊な調理技術をもたない人、すなわちアルバイトでも簡単に調理ができることを意味し、その結果としてコストを下げ効率が上がることにつながるわけです。
従来、処理をされていない肉の表面を削り落とすというのは職人にとっては当然のことなのですが、その必要性を教えられていない、または教えられる必要がなかった厨房スタッフにとっては、届けられた肉が生食用の肉だと思ってマニュアル通りに調理するしかないといえます。
今回の事件は、マニュアルと効率化の落とし穴が露呈した事件ともいえるのではないでしょうか。
ITはサービスの提供で人を死なせることにこそ幸い至りませんが、この事件から学ぶことは多いと思います。とくに開発工程がコーダーやプログラマー、プロジェクトマネジャーなどに細かく分かれ、各階層では自分のやっている仕事が全体にどのような影響を及ぼすかを考えることなく、マニュアル(指示書)にそって、作業として仕事をする。これはオペレーションレベルでも同じですね。その結果、できあがったシステムは脆弱なものとなり、満足行くサービス提供ができなくなることがままあると思います。
効率化を問うためには会社の業務を作業に分解しプロセスを組み立てることが必要ですし、企業としては効率化は追求すべきです。その一方で、作業の「WHY?」(いったいその作業は何のためにおこなうのか、全体像の中での位置付け、またその作業が全体にどのような影響を及ぼすのか)の説明もないままで、スタッフを作業員として扱って作業をふるような業務慣行は、逆に企業のリスクを増やしているのではないかと思っています。
100%のサービス提供、品質の高さの保持・・・わが社ではそれらを非常に大事に思っているのですが、まだまだ完全に実行できているとはいえません。会社全員が「WHY」を理解していることで、昨日より今日、今日より明日により品質の高いサービスを提供していける、そんな会社にもっともっとしていきたいです。