昨年10月頃でしたか矢野経済研究所の方から取材協力依頼がありました。今回はウェブ、ネット-マーケティングのツールのひとつとしてレコメンドツールを取り上げたいということでした。(以前には、レコメンド市場単体でレポートを出されています。)取材された方も、レコメンドは完全にウェブサイトのツールとして定着した感があるということをおっしゃってましたが、1998年から日本初のレコメンド専門企業としてやってきた私たちとしては、そのコメントをお聞きして「ようやく」という感がありました。このお正月に、2010年のレコメンド市場を振り返ってみました。
昨年2010年のレコメンド市場に見られた特徴的な現象のひとつとして、レコメンドへの新規参入が引き続き見られたということがあります。実は私は、20100年度には結構レコメンド企業の淘汰が始まるのではないかと思っていました。市場の拡大スピードよりも、サービス提供ベンダーの数の増加スピードが上回っていると思われたからです。事業再編を余儀なくしたところもあったようですが、淘汰にはいたらず、それよりも2010年、レコメンドサービスを提供するという企業の数はまた増えました。
新規参入した会社としては、弊社シルバーエッグのように、レコメンド専業というよりは、レコメンドはメインではなく、アクセス解析ツールや口コミツール、データマイニング(ウェブサイト作成といったところもあります)が実はメインで、プラス、レコメンドも販売してますという企業が増えたという印象です。
(ここでいう新規参入には、ECパッケージの付属機能としてのレコメンド提供についてはいれてません。現在、多くのECパッケージにレコメンド機能が付属としてついているようです。これには、自社開発版とOEM版がありますが、私には、10年前ほどに大型CRMパッケージに付属としてついていたパーソナライゼーション機能と位置づけが似ているように見えます。つまり、融通がきかない、拡張性がない、簡易なものが多いといった点です。ただし、付属機能であるので、サービスを新たに導入するときの手間が省けるといったメリットはありますが。)
昨年レコメンドへ新規参入した企業規模はNTTレベルの大企業からベンチャー系までと様々でしたが、やはりベンチャー系が主流でした。
一体なぜこのように多くの企業が「レコメンド」に参入してくるのか。
ひとつには、レコメンドが新たなウェブツールとして市場で認識されたため、後追い参入が発生したこと。また、最適な情報をフィルタリングすることができる技術としてソーシャル時代のウェブにおける重要性がますます注目されていることがあげれますが、
ただ、もうひとつとして、参入の壁が低いことがあげられるのではないかと思います。非常に高度で質の高いレコメンド技術をサービス化していくのはかなり専門性がいりますが、相関を形成する技術の情報は、ネット上でも多く公開されていますし、大学などでも教えるところが増えているので、「レコメンドサービス」というものを作るということだけであれば、比較的簡単に作ることができると思います。そういった意味で、今後もっとレコメンドをやっているというベンチャーが増えるのではないかと思います。
もうひとつの2010年の流れとして、大手ECサイトへのレコメンド導入が一巡したと見られ、中小サイト向けのサービスの提供が開始され、それにつれサービス提供価格の下落傾向とサービスの簡易化が見られたことがあります。
しかしながら、そういう中で、レコメンドを導入したサイトの中では効果がでなかったということでレコメンドサービスを取りやめた企業が複数でてきたという憂うべき事実があります。弊社シルバーエッグ代表トム・フォーリーは、常に、『悪いレコメンドならばやらない方がまし』といっていますが、まさしくその通りになってしまった例です。憂うべきことです。
現在のレコメンド業界は、いっときのアフィリエイト業界の流れと似ているのではないかと思います。
アフィリエイトというサービスが注目を集めると、どんどんと新規参入がおこり市場が作られる。新規参入組は、どちらかというとサービス価格を抑えて市場シェアをとろうとするが、価値の感じられないサービスはどんどん淘汰されていったという流れです。
現在、レコメンドに対する市場認識は、売上アップやトラフィックアップのためのサイト内ツールであるというところが大勢ではないかと思います。しかしながら、レコメンドとは、本来は単なる「おすすめ」機能ではなく、サイトが個別ユーザーに対して、ベストなサービスを提供できるようにするためのものです。サイト・パーソナライゼーションのためのレコメンドの在り方について、今年は提供者側がより市場啓蒙をすべき時期であるように思えます。
今年、より様々なサービスやアプリケーションとレコメンドとの連携が進むのではないかと思っています。すでに2010年から見られていた動きではありますが、メール、LPO、アクセス解析などとの組み合わせがますます進むと思います。これについては、また別途どこかでまとめてみたいと思っています。
今年は「さらなるレコメンド拡大の年」?
(Note: 本ブログに掲載している内容はあくまでも私個人の見解であり、シルバーエッグ・テクノロジー株式会社の会社としての見解を述べているわけではありませんので、あらかじめご了承いただきますようお願いします。)