インターネットビジネスでの重要な指標の一つが口コミだと考えることができる。とくに、ソーシャル化がますます進んでいる現在では、より注目すべき指標だろう。英語ではreffaralという。ご存じのとおり、Seth Gordinが唱えたバイラル・マーケティングは口コミベースのもの。
ところで、1年ぶりにアメリカに来てみて改めて思ったことが、日本とアメリカの文化による口コミの違いが存在するということである。日本では他人によほどなことがないと話しかけない。アメリカは、地域にもよるが、知らない人にも平気で話しかけるという文化がある。たとえば、アウトレットモールでレジの前で人が列を作っているとする。そうすると並んでいる人の間で次のような光景が実際に存在する。
女性A:「今日のセールはお得ね。」
男性B:「実はここの提示価格よりももっと安く買ったんだ。」
女性A:「ええ?なぜ?」
男性B:「実は○○というウェブサイトに行くと、本日のお得品を紹介してくれるんだよ。そのクーポンをゲットするとセール品でも10%引いてくれるというわけさ。」
女性A:「そのウェブサイトのURL教えてくれる?」
なんていう会話が、まったく赤の他人の間で成立するわけだ。ちなみにこれは実際に耳にした会話で、女性Aは私の知人である。聞くと、便利なインターネット・サービスの情報は、インターネット上からよりも、このように人づてで聞いたりすることが多いという。
日本での口コミは、とくにリアルの状況では、職場や学校といった知り合い同士の間で起こることがほとんどであろう。その逆に、MIXIや2チャンネルという匿名性の高いインターネットの場所ではまるで別の人格をもったかのように活発に情報が交換されることも、極めて日本的であると思われる。Twitterが日本で人気なのも、リアルな世界であれば見知らぬ人に話しかけることに抵抗があってもインターネット上であるとその抵抗感が消えるため、何も憚らずに話ができるところに魅力を感じてではなかろうか。
アメリカのインターネット・マーケティングは常に進化しており日本におけるECのソーシャル化を考える上でも参考になるものだが、「口コミ」という言葉ひとつをとってもこのように微妙な感覚のずれも存在するので、そこも考慮して参考にすべきだなぁと思った次第である。