日経ベンチャーという雑誌があります。今年4月から、日経トップリーダー に名前が変更になったようですが、この雑誌を定期購読していると、講演をいくつか収録したCD-ROMがついてきます。出張や営業で時間がかかる場合に、これをi-phoneに入れておいて聞くようにしているのですが、たまに、「おおっ、これは」と参考になるような講演や、「やっぱり、頑張ろう」と気持ちを鼓舞してくれるような講演に出会えることがあります。
そんな中で、つい2,3日前に聞いた田中宇(たなか・さかい)さんの講演は、久々に非常に印象に残る講演でした。田中宇さんは、ジャーナリストです。田中宇の国際ニュース解説というウェブサイトを開いていらっしゃいます。TORAY→共同通信→MSN→フリーのジャーナリストという経歴ですが、へーっと思ったのが、講演の中でおっしゃっていたことですが、情報をとるのに日本の新聞は役に立たないということです。なぜならば、日本の新聞には編集委員長など、かなりトップにならなければ、記者の主観や意見を入れていけないことになっている。また編集委員長にしても、もう自分の意見をいわないことに30年間慣れてきてしまっている人たちなので、はっきりとしたことはいわない。欧米の記事の場合、必ず自分がその件に関してどのようなことを思っているかがはっきりと書かれている。その分、記事も長くなっているし、その行間を読み説いていくことで、真実についての仮説を立てることができるし、どのような立場で事象を見るかというがジャーナリストとして大切であると考えている、とのことです。
また、日本の政治家の外交認識レベルのなさについても言及されていました。
現在ソマリア沖での海賊が問題になっている。これまで米国がほぼ1カ国にてソマリア沖地域での治安対策に海軍を派遣してきた。オバマ政権になり、米国が国際社会に対し、この地域の治安のために各国が力を合わせようという発言をした。これに答えて、中国なども海軍を派遣し、実際に治安の成果を出している。日本にも再三要請があるが、実際にある日本の政治家などは、「本当に海賊なんているの?日本の船はまだ襲われたことないんでしょう。」という発言をした。そもそも問題認識のレベルが違うということでした。もちろん、自衛軍を送るかどうかの是非について意見をされていたのではなく、大海を見ずして自分のいる金魚鉢が全ての世界だと思っている日本の政治家に対する痛烈な批判であったと思います。
その他、こんな切り口で国際情勢を見ることができるんだと、頭をがつんとやられたような気がしました。
ものの見方はひとつではないことを示す大切なエピソードでした。