近頃、ダイナミズム(Dynamism)がビジネスを左右するのではないかと思っています。
ダイナミズムは、エネルギーや力ということですが、私としては、うねっているエネルギー、噴出する溶岩のようなイメージという感じをもっています。
ベンチャーでも、10人ほどになってくると、そこにいる人たちが作り出すダイナミズムで企業の成功も失敗も決まると思います。いかに経営者がこうしようと高らかに宣言してとしても、実際にそれを現実化する人たちが、流れを作らなければ、それで終わってしまいます。
私たちも以前はレコメンデーションをソフトウェア製品として作っていました。マーケティング的には市場のニーズがまだなかったと言うのでしょうが、「ダイナミズム」の視点からいうと、のれるだけの流れの力がなかったということになると思います。確かに、先端的なベンチャーECサイトが、興味を持っていれてくれたりしたのですが、そこが採用しても、その後、われもわれもという企業が続かず、ちょっとあった流れもとまってしまったわけです。
現在のレコメンド市場は、完全にダイナミズムを感じます。ティッピングポイントという本が2000年に出て、ビジネス語にもなったと思いますが、「あるアイディアや流行もしくは社会的行動が、敷居を越えて一気に流れ出し、野火のように広がる劇的瞬間」という意味です。
私たちが、誰にも知られず、「レコメンデーションって何?」といわれながら、ASPを立ち上げようとやっていた2003年ごろから、少しずつこの手法に対する認知度があがってきつつ、去年、まさしくティッピングポイントを迎えたという感じです。
流れ(ダイナミズム)ってすごいなと思います。
歴史こそ、ダイナミズムの流れで決まっていっているのではないでしょうか。今回オバマ氏が初めての黒人大統領として当選したのも、そうです。ブッシュ前大統領のいろいろな施策があり、それによって米国の威信がくずれた。国民は経済的危機に直面し、アメリカ人としてのプライドもなくなってきたところで、「新しい」ものを必死に探していたのです。オバマ大統領は大変素晴らしい人だと思いますが、本当にこれから何がどうなるかだれもわかりません。ただ、この流れの中で、アメリカと世界のダイナミズムが彼を大統領に押し上げたのです。
人生も同じです。本当に何をやってもうまくいかないときってあるもんです。でもそれは流れがそのときにそうなっているからにしかすぎません。ダイナミズムの流れが自分に逆らっているときは何をやっても成果がでません。そんなときは、次の潮目が変わるときにうまくのれるように準備をしておくのが肝心だと思います。
この1年、経済情勢が最悪の中、IT業界がどのようなダイナミズムを見せるのか、それをいち早くつかむことが必要です。