ここ数年、毎年1度、母校である神戸女学院大学で講義を一こま担当しています。
「キャリアプロフィール」といって、いろいろなキャリアを持っている卒業生が持ち回りで自分たちのキャリアを紹介し、働くことやキャリアの意味をわかってもらおうというユニークな授業です。対象は2回生が主なので、19歳、20歳といった若い女性たちです。
他に講義を担当されている卒業生の方々は法廷通訳や絵本作家や大学の先生など専門職が比較的多いです。
私の経歴は多分その中でも異色ではないかと思います。
まず、失敗からのスタートです。大学卒業後にいわゆる企業への就職に失敗、その後大学教授の秘書としてなんとか就職します。その間に通訳の勉強をして、まず大阪府知事の通訳として大阪府庁で勤務、それからは、フリーの同時通訳者として、国際会議等で仕事をしました。
起業したのはその後です。オンラインデータベースの会社を興して初めて「経営者」の苦労を知ります。今の会社であるシルバーエッグ・テクノロジーは2番目の起業です。
学生たちには、私がそれぞれの節目で経験した失敗談や成功談を共有して、キャリアと人生へのアドバイスとしていただければという気持ちでお話してます。
毎年この講義の終わりに、キャリアについての考えを一人一人に書いていただくのですが、中には、「ベンチャー経営者って若い男性がなるものだと思った。女性もなれると知って元気づけられました」というようなコメントがあります。このようなコメントを見るたびに、彼女たちの純情さというか、情報不足さに、このままで社会に出てよいのかと心配してしまうわけです。
もっと彼女たちが、様々な女性経営者やキャリアを持つ女性たちの話を聞けるチャンスを多くして、それぞれの自分にあったロールモデルを見つけることができれば、もっと多くの女性たちが自信をもって社会に出ていくことができるようになるのではないでしょうか。
私も大学卒業後に道に迷っていたときに、通訳と翻訳をバリバリにやっていた知り合いの女性に出会いました。それまで、通訳を仕事にしようと思ったことさえなかったのですが、彼女の生き方に刺激され、彼女に背中を押されて通訳の学校に行くことになりました。それがキャリアの第一歩になりました。
まだ女性がキャリアを積むようになってから日が浅い中、女性には女性の羅針盤が必要なときがあります。私もそのような存在になれるよう、また明日から頑張ろうと思った大学での講義でした。