アメリカの超高視聴率番組として「アメリカン・アイドル」という番組があります。
ご存じな人も多いでしょうが、全国で歌のオーディションを行い、最終に勝ち残った人が
次のアメリカのアイドルとしてデビューできるというものです。特徴としては、セミファイナル
以降の審査はすべて一般からの電話投票であることです。最後のファイナルでは、
なんと3000万人が投票するという国民的番組です。
「次のスター」という新商品を生み出すために、消費者調査を同時にやっているような
もので、非常に効率的な新商品マーケティングだといえます。
ここでおもしろいことは、優勝した人全員がその後メジャーデビューして
成功しているわけではないということなのです。(もちろん、その多くは立派な
スターに育っていますが。)逆に2位以下でファイナリストに残った人が
大ブレークしたということがおこっています。
その一番良い例は、シーズン8で準優勝だったアダム・ランバートです。
ファイナルでは負けたものの、その後、「ゲイ」としてカミングアウトし、
抜群の歌唱力に加えて、話題とスタイルでスポットライトを浴び、
シーズン8の優勝者であるクリス・アレンをはるかに超えるビッグスターに
なってます。
これは、新商品を考える際の大切なポイントを示唆していると思います。
なぜ大衆はあの時にクリス・アレンを選び、アダム・ランバートを
選ばなかったのか。---即ち、あまりに新しい価値を目の前にすると、
まず大衆は最初は理解できず拒絶する人も多いためであるからです。
なので、無難なクリス・アレンに投票したのだと。
しかし、その後新しいものを求めるマーケットでは、やはりアダム・ランバート
のようなアーチストの方が望まれていたため、クリス・アレンではなく
アダムに采配が上がったのでしょう。
フォードがこんなことをいっていたそうです。
「もし大衆に聞いて車を作っていたとしたら、車ではなく、もっと早く走る
馬を作ることになっていただろう。」
事業計画の提示においては常に投資家からは、市場が望まれるものかどうかがわからなければ
投資できない、ヒアリングをしてほしい、市場規模はどうだ、ということを言われます。
しかし、真に新しい商品やサービス、アイデアの場合、市場はそれを目の前にしてのち
初めて理解することができるということがほとんどであるはずです。
市場ニーズを考えることは大切ですが、新しいものを世の中に送り出していくためには、
あまりニーズやウォンツという話をするよりも、まずは新しい価値を
スピーディに市場にぶつけていく行動力の方が大切なのではないかと
思います。